医療未来学者が語る 5大国民病のこれから

がんの診断・治療はゲノム医療と新世代コンピューターが個別化治療を実現する

新たながん治療法が次々と実用化されるだろう

■新たな治療法も続々と実用化

「その前にも新たながん治療法が次々と実用化されるでしょう。たとえばすでに第5のがん治療法との呼び声が高い光免疫療法が実用化されています。がん細胞にのみ吸着する薬剤を投与した後、人の細胞には害を与えない近赤外線光でがん細胞を消滅させる方法です。手術ができない難治性再発頭頚部がんに保険適用されています。日本人研究者が開発し、オバマ元米国大統領が一般教書演説で語った期待の治療法です」

 周囲にある正常な細胞を傷つけずにがん細胞だけを攻撃する新たな治療は他にもある。ホウ素中性子捕捉療法だ。がん細胞に特定の元素(ホウ素)を取り込ませた後、中性子を照射することでがん細胞のみを障害するという。これまでは中性子を放出する機械が巨大になるため普及しなかった。しかし近年、小型加速器の開発が進み、今後はより多くの人にホウ素中性子捕捉療法が受けられるようになる。

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奥真也

奥真也

1962年大阪生まれ。東大医学部卒業後、フランス留学を経て埼玉医科大学総合医療センター放射線科准教授、会津大学教授などを務める。その後、製薬会社、薬事コンサルティング会社、医療機器メーカーに勤務。著書に中高生向けの「未来の医療で働くあなたへ」(河出書房新社)、「人は死ねない」(晶文社)など。

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