老親・家族 在宅での看取り方

最期の時を飼い猫と一緒に過ごしたい…だから自宅を選ぶ

写真はイメージ

「もともと元気で病院に本人が歩いて行って輸血していたんですが、年末に緊急で違う病院に搬送され、入院中に食が細くなって精神的にも参っちゃって、家に帰りたいって希望だったのでかなえてあげたいなって」(長男)

「最後の輸血はいつでしたか?」(私)

「先週かその前って」(娘)

「口から取りますか、それとも点滴で?」(私)

「飲めます」(患者)

「そうしたら、まずは口から水分を取ってもらって、今日ダメそうだったら明日から再開できるようにしましょうか」(私)

「1日の最低は?」(患者)

「食事の状況も見てですが、500ミリリットルですかね」(私)

「そんなに飲めないよね」(患者)

「水じゃなくてお好きなドリンクでいいですよ」(私)

 私たちのやりとりをまるで聞いているかのように、患者さんのベッドの下で猫ちゃんが丸まっています。

 その瞬間なんとも穏やかな時間が流れているのを感じたのでした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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