■早い段階で検査を受ける
また、アントラサイクリン系などの心毒性がある抗がん剤の治療を受けている患者さんは、「フランクスターリング曲線」でも、心臓の無理がきかず、すぐにへばってしまうことがわかっています。フランクスターリング曲線というのは、縦軸を心拍出量、横軸を前負荷(心室容積:大静脈圧)にしたとき、循環器生理学の法則に基づいてひかれる曲線のことです。たとえばクルマのエンジンは、回転数を上げるとどんどん馬力が上がりますが、ある地点に到達すると回転数を上げても効率性の低下からそれ以上では馬力が落ちていきます。心臓も同じで、脈拍が増えると心拍出量も増えていきますが、ある地点から増えなくなって心不全の状態になってしまうのです。
健康な人であれば脈拍が増えたり血圧が上がるなどして心臓にかかる負荷が大きくなってもある程度は耐えられます。しかし、心毒性のある抗がん剤の治療を受けている人は、フランクスターリング曲線のカーブが左側にきてしまって早い段階で耐えられなくなってしまいます。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」