上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓疾患を発症したがん患者はまず心臓の治療を行うのが原則

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 心臓疾患があるがん患者さんの治療に関しては、私は草創期から関わってきました。いまの循環器治療に関するガイドラインでは、心臓疾患があってがん治療を行う患者さんは、冠動脈の場合ならステントではなく、まずは全身への負担が少ない心拍動下の冠動脈バイパス術を先行してから、がん治療に臨むのが安全性が高いと推奨されています。これは、われわれがずっと行ってきた治療で良好な成績が積み重なったことにより判断されたものです。

 前回お話ししたように、今年3月、一部の抗がん剤の心臓に対する副作用への対応について、日本臨床腫瘍学会と日本腫瘍循環器学会が初めてガイドラインをまとめました。これを機に、心臓疾患を発症したがん患者さんの診療や治療が、さらに進歩していくのは間違いないでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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