第一人者が教える 認知症のすべて

入院した高齢者の3分の1がせん妄を経験…発症の半分は入院中に

せん妄の促進因子を除去し認知機能低下を予防

・入院中、点滴やチューブを自分で抜いてしまう

 せん妄と認知症は双方に関連すると述べましたが、現時点で認知症ではない場合、せん妄と認知症を区別して考える必要があります。せん妄の促進因子をできる限り除去することでせん妄を予防し、認知機能低下に結びつくのを回避するのです。

 せん妄と認知症の違いとしては、まずせん妄の発症は「急激に」起こること。初期症状は「幻覚、妄想、興奮」であり、認知症の「記憶障害」とは異なること。

 また、せん妄は「夕刻から夜間に発症することが多い」のですが、認知症ではそういった変動は少ないです。せん妄の症状は一過性で、数時間から数日でなくなります。改善した後は、発症前と同じ状態に戻っています。認知症で認知機能が低下している場合は、そうはいきません。

 なお、せん妄には、3つのサブタイプがあります。過活動型、低活動型、混合型です。かつては、過活動型がせん妄の一般的なタイプと考えられていましたが、全体の25%ほどで、ほとんどが低活動型だといわれています。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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