第一人者が教える 認知症のすべて

入院した高齢者の3分の1がせん妄を経験…発症の半分は入院中に

入院した高齢者の3分の1がせん妄を経験

 せん妄は、突然発症する精神機能の障害のこと。高齢者に特に多く、一般的な医療機関に入院した70歳以上の高齢者では、3分の1がせん妄を経験。その半分は入院時点でせん妄となり、残りの半分は入院中にせん妄を発症するといわれています。何かひとつの因子が関係しているというより、複数の因子が関係して引き起こされます。このせん妄、認知症との関連性が強く、双方に関連しています。つまり、せん妄があれば認知症になりやすく、また認知症がせん妄を生じやすくするのです。

 フィンランドの後ろ向きコホート研究では、せん妄がある人は認知症の発症リスクが高く、重症度とも関係している。そしてベースラインでせん妄の既往がある群は、そうでない群と比べて、認知症の検査「MMSE」のスコアが年間1点以上多く低下するという結果が報告されています。なお、MMSEは1問につき正解1点で、30点満点中27点以上取れば「問題なし」。それを下回ると「軽度認知症疑い」「認知症疑い」となります。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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