もうひとつ、心筋保護液として広く使われているのが「GIK液」です。含まれている成分のグルコース、インスリン、カリウムの頭文字をとって名付けられたもので、安価なうえに施設内での調製もそれほど難しくないため、1980年代くらいまでは日本でもGIK液を主体として使っている施設が多くありました。
■血液を混ぜる方法も
1990年代に入ってもさらに試行錯誤は続きます。心筋保護液を使えば心筋細胞の代謝はある程度は落ちるものの、無酸素の状態が続くため心筋のダメージが残りやすいのではないかといった考えから、心臓を冷却する最適な温度が模索されます。4度から20度前後まで試され、さらに心臓を停止させている時間は1時間30分くらいまでは安全で3時間を超えると危険になる、その間の時間は個人差が大きいといったようなさまざまな学説が出てきました。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」