心筋保護液についても、従来のものに不整脈を抑える薬や心筋保護作用があるアミノ酸を加えるなど、さまざま工夫が続きました。
ちょうどそのあたりの頃から、過去に心筋梗塞を起こして心機能が低下している状態の患者さんに対する再手術が行われるようになります。その場合、従来のように心臓を冷却したうえで心筋保護液を使う方法では、手術成績があまり良くありませんでした。いったん止めた心臓を術後に再び動かして血流を再開させても、収縮が不十分なケースが多かったのです。
そこで、心筋保護液に血液を混ぜる方法が検討されます。血液には心筋への酸素供給や、pH低下に対する強い緩衝作用があるためです。
じつは血液を混ぜた心筋保護液による心筋保護法は以前から存在しました。しかし、赤血球は温度がおよそ15度以下になると変形能が低下してしまって、血球が壊れる現象が起こります。そのため、長時間の手術では人体にとってマイナスになるという問題点があり、使われていなかったのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」