しかし、冷却する心臓の温度を少しずつ上げていって、赤血球の変形能が保たれる20度くらいの環境を維持すれば、血液を混ぜた心筋保護液を使った心臓手術の成績は非常に良好だということがわかってきます。
さらに、血液を混ぜる割合についても研究が進み、2分の1にするのか、3分の1なのか、4分の1がいいのではないかといった議論が活発になります。
そしてさらに、心臓の温度をそこまで上げても心筋保護に問題が生じないのなら、もっと温度を上げていわゆる「体温」くらいにしても良いのではないか、という意見が登場します。
心筋のダメージを少なくするには心臓を冷却して心筋細胞の代謝を落とすという方法が最善と考えられていた時代ですから、当時は「心臓の温度を上げる」なんて正気の沙汰ではないと思われていました。しかし、それが今に至る新たな心筋保護の方法につながっていきます。次回、さらに詳しくお話しします。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」