医者も知らない医学の新常識

抗菌剤を使うと肺がんが増える? 感染症専門誌で韓国の研究結果が論文報告

写真はイメージ

 肺がんは医療の進歩した現在でも、予後の良くないがんのひとつとして知られています。肺がんの原因として第一に挙げられるのはたばこを吸うことで、喫煙者が減少するにつれて、たばこと関連する肺がんは減っていますが、たばことは関連が少ないタイプの肺がんもあり、その原因の多くは不明です。

 抗菌剤は細菌感染の治療薬で、感染症の治療には必須の薬です。しかし、腸の善玉菌も殺してしまうので、正常な腸の細菌のバランスを乱すような悪影響があります。抗菌剤を使用すると下痢になることがあるのはそのためです。腸には実は体を守る免疫細胞の多くがあって、腸の健康状態が悪くなると、免疫細胞の働きも低下するのです。そして、それが肺がんなどの原因につながっているという可能性が最近指摘されています。

 今年の感染症の専門誌に掲載された論文に、韓国での研究結果が報告されています。健康保険のデータから、抗菌剤の使用期間と肺がんリスクとの関連を検証したところ、合算で365日以上抗菌剤の使用歴のある人は、使用をしなかった人と比較して、肺がんになるリスクが21%増加していました。抗菌剤を多く使用していた人は、それだけ感染症に多くかかっていた可能性があり、それが影響した可能性は否定できませんが、抗菌剤の使用は、必要最小限とするのが正しい付き合い方であるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

関連記事