がんと向き合い生きていく

膵臓がんで亡くなった先輩医師にはさまざまなことを教わった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 私が心臓の手術をした数年後の同窓会の帰り、夜の駅のホームで、B先生は少し千鳥足になりながら、「おい、体に気をつけてな。無理すんなよ。死ぬなよ」と大きな声をかけてくれました。そして、反対方向の満員電車に乗られ、手を振って行かれました。それが、B先生とお会いできた最後でした。

 その2年後、B先生が膵臓がんで亡くなられたと聞きました。あれからすでに5年たちます。

 新橋駅近くの居酒屋を思い出します。いつも、ニコニコ、優しい目、べらんめい口調で、大きく私を包んでくださいました。

「おおい、体に気をつけてな。無理すんなよ」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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