がんと向き合い生きていく

胃がんの手術から2年目、夜な夜な“盗み食い”するようになって…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 知人のKさん(68歳・男性)が胃がんと診断されて、胃の半分を切除する手術を受けたのが3年前になります。

 手術後、1年間は抗がん剤治療を行いました。この間、体重は手術する前の元気な時から比べて7キロほど減りました。それでも、下痢をしやすいことなどはありましたが元気に過ごしていました。

 そんなKさんは、3カ月ほど前から、夜10時ごろに睡眠薬を飲んだ後、そのまま寝てしまわないで台所に向かい、テーブルの上にある食べ物をつまむことが多くなりました。毎晩ではないのですが、寝る前になんとなく空腹を感じ、食べてしまうのです。その睡眠薬は長く内服してきた薬で、その添付文書に「食欲増進」と記載されてはいません。

 夕食はだいたい夕方6時過ぎにとりますから、寝る頃になると胃の内容物が減っていて空腹を感じるのだと思うのですが、冷蔵庫からすぐに食べられるもの、ヨーグルト、カステラ、菓子パン、バナナなどを取り出して食べてしまいます。食べて満足して寝るのです。 手術をした担当医には、このことは話していません。糖尿病の指標になるHbA1cは正常値です。ただ、翌朝はなんとなく胃がもたれるように感じるのでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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