がんと向き合い生きていく

入院していれば家族に会えないまま亡くなっていたかもしれない

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「先生、お世話になりました。いろいろ相談にのっていただきまして、ありがとうございました。

 夫は昨夕、亡くなりました。午後になって顎が動くようになり、しばらくしてすっと動かなくなりました。穏やかに死を迎えることができました。ここ1週間は、看護師さんが毎日来てくれました。孫にも会えました。

 家に帰ったころは『治るんだ』と言っていたのですが、『こんな病気になってしまって申し訳ない』とも私に言っていました。2月か3月ごろ、もうだめかと思いましたが、今まで持ちました。訪問してくれる医師が言っていた通りでした。家に帰って、好きなものも食べました。

 本人にとって、コロナで面会を制限された病院にいるよりは、家にいて、みんなに会えて、孫にも会えて、その点はずっと良かったと思っています」

 電話で相談をしてきたのは、患者の奥さんからでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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