面接では、患者さん、ご家族双方に「心配なことはすべて話していってください」と伝えます。その上で、まずは患者さんに最近の様子を伺います。たいていの場合、ご家族の方が病状を深刻に捉えており、患者さんの報告に異論を唱える傾向があります。たとえば、こんなふうに。
「最近はどうですか?」(私)
「やっぱりちょっと忘れてしまうことがあります。忘れないようにって思っても、アレはどこにやったかなって……」(患者さん)
「いえ、先生。父は物忘れがだいぶ進んでいるんです。お昼ご飯を食べた後に、『お昼、まだ?』なんて何回も聞いてきて、『もう食べたよ』と言っても、『そんなはずはない』と怒り出すんです。一緒に買い物に出かけたら、途中で『何しにここに来た?』『帰りたい』と繰り返して。物忘れがこのままひどくなっていったら、どうなってしまうのでしょうか。父が壊れていってしまうかと思うと、不安で不安で」(娘さん)
第一人者が教える 認知症のすべて