さらに言えば、医学論文を日常的に読んでいる医者であっても、その読みが統計学の誤用であることが多い。
ありがちなのは、統計学的な検定結果をそのまま臨床的な有効性であるとの読み方をしてしまうことである。論文全体を読むことなく、「統計学的に有意な効果があった」「統計学的に有意な効果はなかった」との結論部分だけをうのみにしてしまうのである。
1つ例を挙げるならば、これまで取り上げてきたデンマークのランダム化比較試験の結果を、「危険率が38%で5%より大きいのでマスクの効果はない」と判断してしまうことである。逆にこの論文が示す危険率が5%より小さければ「マスクは有効だ」と判断してしまうのも同様な間違いである。
■「統計学的な有意差」と「臨床的な有効性」は別物
そもそも危険率から「効果あり/なし」の判断をするのは、統計学的にも簡単なことではない。
医療だけでは幸せになれない