医療だけでは幸せになれない

「メタ分析」が最良のエビデンスとは限らない…出版バイアスと異質性バイアス

「マスク着用個人の判断」になってはや5カ月…(C)日刊ゲンダイ

 バイアスは効果を過大評価したり、過小評価したり、どちらの方向にも働く。

 ここでは出版バイアスはどちらかというと効果を過大評価する方向に働き、異質性バイアスは過小評価する方向で働いているように考えられる。そうなると、全体としてこの研究のバイアスは、治療効果を過大評価しているのか過小評価しているのか、はっきりしない。

 単独で行われたバイアスをコントロールしやすいランダム化比較試験に比較して、メタ分析には常にこのコントロール不能なバイアスの問題が付きまとう。メタ分析は最も信頼に足る情報であるというような状況が広がっているが、それは大きな誤解である。信頼が高い情報であることに間違いはないが、その背後のバイアスの可能性は低くないのである。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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