医療だけでは幸せになれない

「メタ分析」の情報の氾濫はむしろ判断を混乱させる

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 この論文中には、この点が、このメタ分析の最大の強みのひとつであるとの記載がある。情報収集についてのバイアスを最小限にとどめるような努力がなされているというわけである。ただ、ここで最大限の努力がはらわれていたことは評価できるが、バイアスが避けられているかというと、そうとは限らない。

 前回指摘したように、出版されていない論文はそもそも候補に入れることができないし、英語以外の言語で書かれた論文を網羅的に検索し、評価することもむつかしい。そのため、どうしても英語以外の言語で書かれた論文は漏れやすいという問題もある。これらの問題が具体的に結果を、どう歪めているかの検討は困難である。

 さらに、もうひとつ大きなバイアスがある。一定の基準を満たした質の高い論文ですら、一つ一つの研究にはバイアスの可能性がある。抽出された論文自体のバイアスの問題である。ここでは多くの専門的な知識を要する。まずは臨床研究のタイプを理解する必要がある。そのタイプにより、検討のポイントが異なるからである。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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