医療だけでは幸せになれない

「メタ分析」の情報の氾濫はむしろ判断を混乱させる

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 介入研究については、マスクの効果の検討に対して本連載でも取り上げたデンマークのランダム化比較試験が分析に利用されているが、この論文の個別のバイアスの評価については記載されておらず、「全体としては中等度のバイアスあり」という評価が報告されている。

 メタ分析をするからといって、個々の研究のバイアスが修正されるわけではないのである。

 多くのメタ分析が行われるようになって、医療者の判断に大きな影響を与えるようになった。

 しかし、多くの医療従事者はこうした論文を系統的に評価する方法を学んではいない。医療従事者が「メタ分析の結果だ」と言って提供する情報であっても怪しいものがある。ましてや患者側がこうした情報を吟味するのは困難である。質が高いといわれるメタ分析の情報の氾濫は、現在の判断をむしろ混乱させているのかもしれない。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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