医療だけでは幸せになれない

「メタ分析」の情報の氾濫はむしろ判断を混乱させる

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

■論文の系統的評価は簡単ではない

 このメタ分析では「観察研究」と「介入研究」という2つのタイプの研究を統合しているが、観察研究と介入研究ではチェックするポイントが異なる。

 観察研究の代表は、「コホート研究」という実際の臨床現場で行われていることを観察して検討する研究で、ランダム化比較試験のように研究者側がどんな治療介入をするかを実験的に割り付ける介入研究とはバイアスの検討事項が違うのである。

 観察研究では、研究者側でマスクを着けるか着けないかどうかを指示するわけではなく、現実にマスクを着けていた人と着けていなかった人を比較するために、以前指摘したような自己選択バイアスや交絡因子を避けがたい。

 さらには観察研究では多くの解析が行われることが多いため、たまたま「有効」という結果が出た部分が報告されやすい面もある。事実、このメタ分析の論文の評価においても、大部分の研究において交絡因子によるバイアスの可能性は高いと報告されている。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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