医療だけでは幸せになれない

効果を示すさまざまな指標…「正しい指標」があるわけではない

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 もしコロナの発症率が観察期間に比例するとすれば、観察期間に比例して絶対危険減少は大きくなり、治療必要数は小さくなる。観察期間が60カ月であれば絶対危険減少は9%くらいかもしれないし、治療必要数は11人くらいかもしれないのである。観察期間を常に考慮しないといけない絶対危険減少に対し、相対危険が観察期間に左右されにくい点は絶対危険減少より優れた指標ともいえる。絶対危険減少の方が優れているというわけでもないのである。

 マスク推奨の効果は相対危険で0.884ということもできるし、相対危険減少で11.6%少なくなる、ということもできる。さらには絶対危険減少で0.97%(6カ月)少なくなる、治療必要数で103人(同)にマスクを推奨して1人のコロナ発症を予防することができるということもできる。これはひとつの研究の同じ数字を基にして計算されたものである。それにもかかわらず、相対危険、相対危険減少では、絶対危険減少、治療必要数に比べて効果を大きく感じられる。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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