Dr.中川 がんサバイバーの知恵

中咽頭がんは口腔セックスの相手が多い男性ほどリスクが高い

中咽頭がんのリスク因子に変化が…

 HPVは女性器に感染すると、子宮頚がんや膣がん、外陰がんに、男性器に感染すると陰茎がんに。男女共通のがんが肛門がん、そして中咽頭がんです。

 中咽頭がんの場合、発がん性HPVの感染リスクは女性より男性の方が高く、口腔セックスの相手が多い男性ほど高リスクになります。喫煙率の低下で、喫煙由来の中咽頭がんは今後、減少し、HPV由来が主流になるのは間違いありませんが、そのHPV由来も喫煙者は感染リスクが上昇することが分かっていますから、要注意です。

 ただし、HPV由来の中咽頭がんは、喫煙由来に比べて治癒率が高いことが知られています。放射線と抗がん剤を同時に行う化学放射線治療で根治できるため、正常な組織を温存できるので、生活の質を損なうことがありません。

 中咽頭がんを手術で摘出すると、食べ物をのみ込む力が弱くなったり、正しく発音できなくなったり。喉頭まで摘出すると、声帯も切除するため発声ができなくなるのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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