Dr.中川 がんサバイバーの知恵

中咽頭がんは口腔セックスの相手が多い男性ほどリスクが高い

中咽頭がんのリスク因子に変化が…

 化学放射線治療の最中は、口内炎や口の乾燥、皮膚炎などがあり、後遺症としてしばらく残ることもありましたが、最近はそのリスクを抑えるため、放射線の線量や照射範囲を絞る方法が開発され、従来の方法と同等の治療成績が報告されているので、今後は副作用や後遺症が減ってくると思います。それだけに、HPV由来の中咽頭がんが増えれば、化学放射線治療の有用性が増してくるでしょう。女性の子宮頚がんは、世界的に放射線治療が主流ですから、それと同じ構図です。

 HPV感染は、男性も人ごとではないことがお分かりいただけたでしょう。このHPVについてはすでにワクチンが開発されていて、欧米では女性はもちろん、男性の接種も進んでいます。

 千葉県いすみ市や東京都中野区など一部自治体では、小6~高1の男子生徒を対象に自治体独自の対策として約5万円の接種費用の全額助成をスタート。日本でも男性向けサポートが進むことを願うばかりです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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