上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

退職した中高年は心臓病リスクが低くなる…考えられる理由

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 仕事を辞めると、自宅にいることが増えて日常の運動量が減ってしまうのではないかと考える人もいるでしょう。しかし、今回の調査ではむしろ逆であることがわかりました。近年の日本では、日頃から健康維持のために有償でも効果的と思われる日常の改善に取り組むのが当たり前、という文化になってきています。たとえば、飲める水が水道から供給されているのに、浄水器を設置したり、ペットボトルの水を購入する人が珍しくなくなっているのが最たる例です。運動についても、「退職後は意識して歩いたり体を動かさなければならない」という考え方が根付いてきて、仕事しない時間を運動する時間に置き換える人が増えているのでしょう。

■ストレスの解消や睡眠時間の確保もできる

 運動以外の面から見ても、仕事を辞めても生活の質を維持できるのであれば、退職したほうが心臓病リスクの低下を含め、長寿につながる可能性が高いと考えられます。仕事や人間関係のストレスから解放される人、十分な睡眠時間を確保できるようになる人が増え、健康管理がしやすくなるからです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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