上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

退職した中高年は心臓病リスクが低くなる…考えられる理由

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 たしかに、心臓病の予防には運動が重要です。体を動かすと、心臓はより多くの血液を体中に送り出そうとして、普段より活発に働きます。心臓も筋肉でできていますから、適度な負荷がかかることによってある程度は鍛えられます。逆に運動せずに心臓をサボらせている人は、加齢によって筋力が衰えてくると心筋も薄っぺらくなり、ポンプ機能やペースメーカー機能も衰えてきます。

 また、運動によって全身の筋肉量を維持することも心臓を守ることにつながります。一般的に筋力は加齢に伴って衰え、運動不足の場合は全身の筋肉量はますます減っていきます。筋肉は心臓が送り出す血液の受け皿なので、筋肉量が減ると血圧の調節力が低下します。そうなると、重要な働きをしている臓器への血流を確保するために心臓はフル回転を強いられ、負担が増大してしまうのです。

 逆に筋肉量が増えると筋肉の血液量も増えるため、血圧の調節が自律神経も関与してバランスよく行われ、さらにはインスリン抵抗性が改善されたり、善玉のHDLコレステロールが増え、動脈硬化ひいては心臓疾患の予防につながります。

2 / 6 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事