上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心筋梗塞の発症後に「痛み」があると死亡リスク増…海外調査を考える

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 しかし、米国や欧州などの海外では、ステント治療でも冠動脈バイパス手術でも、一度実施したら“やりっぱなし”というケースがほとんどです。中には、追加治療が必要な患者さんも少なくないと考えられます。そうした患者さんを含めて調査すれば、1年後に痛みがあったり、死亡リスクが高くなるのは当然といえます。

 また、日本に比べて米国は肥満やメタボリックシンドロームの人が非常に多く、調査の舞台となったスウェーデンも近年は肥満人口の増大が深刻な社会問題になっています。

 海外の研究では、メタボの人が心臓のカテーテル治療を受けた場合、6割近くの人が再治療になるというデータが報告されています。このように本来なら再治療が必要な患者さんたちの多くが“野放し”になっているわけですから、1年後の調査で痛みがあると回答する可能性は高いといえますし、いわゆる「心事故」と呼ばれる心臓死のリスクがアップしているとも推測できます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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