老親・家族 在宅での看取り方

四肢麻痺の妻の介護で退職した夫 誕生日にはベッドをデコレーションして祝福

介護の形はさまざま(C)iStock

 40代半ばという年齢で脳出血を起こし、救急搬送された女性の患者さんがいます。脳出血では、脳が腫れて頭蓋圧が高くなり、脳の中にある境界や隙間から脳組織の一部がはみ出す「脳ヘルニア」を起こすことがあります。死に至ることもある重篤な状態ですが、彼女の場合、それは回避できました。しかし高次脳機能障害となり、四肢が麻痺。気管切開を受け、1時間おきの喀痰吸引や2時間おきの体位交換などが必要となりました。

 彼女の介護のために、内縁の旦那さんは退職。当初は毎日病院へと通っていたのですが、「病院で行っている療養は自宅でもできるのではないか」と考え、私たちのクリニックに問い合わせ。それから6年、お2人の絆はずっと変わらず、深い愛で結ばれています。

 お2人はもともとバンドを通じて知り合った音楽仲間だそうで、昔のことを振り返りながらかいがいしく、自宅で介護する姿はほほえましいものがあります。もともと普段から手際よく器具の交換をされるなど器用な旦那さんで、私たちの訪問看護が不要なほど上手に介護をされています。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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