舌がんの切らない治療「選択的動注併用放射線療法」 体験したシェフに聞いた

舌を半分以上切ると嚥下機能にも影響

 入院期間は約3カ月。私のがんは舌に1カ所、頚部リンパ節への転移が2カ所で、目に見えていないがんが全身にある可能性も否定できない状態。全身抗がん剤の副作用はキツかった。フラフラでまっすぐ歩けない。動注療法は回数を重ねるにつれ体の負担が重くなり、口の中全部に口内炎ができたようで水を飲んでも痛いほどでした。

 がんが消えている──。そう不破先生の言葉をもらって退院。2カ月に1回、3カ月に1回、半年に1回と徐々に間隔を空けての定期検診で、最後の診断は今年3月。この時点で、次は来年(24年)と言われました。よく聞かれるのですが、退院以降は、定期検診のみで、薬の服用など一切ありません。

 舌を切っていませんから、治療中から会話の能力は全く変化なし。味覚は、最初は何を食べても味を感じない。そのうち塩味は戻ったが酸味や苦みはまだ……と段階を踏み、半年ほどで全ての味覚を取り戻しました。一つ一つの味覚を掘り下げて考察できたことで、治療前より味覚に鋭くなりましたね。がんの治療後、完全予約制のフランス料理店をオープンさせたのですが、以前作っていた料理より淡く繊細な味付けになったとお客さまから評価を得ています。

3 / 4 ページ

関連記事