正解のリハビリ、最善の介護

「廃用症候群」は適切なリハビリでどこまで回復するのか?

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 たとえば、脳や心臓の大きな手術が終わってから、患者さんを寝かせきりにしておくと、廃用症候群になって全身状態は衰えます。75歳以上の高齢者になると、2週間以上の安静臥床は回復のゴールを低下させるうえに、自力で回復するのが難しい状態に陥ります。

 ですから、廃用症候群を防いで早く回復させるためには、治療後は早く起こして、長時間の寝かせきりにはせず、「起こす」「座らせる」「立たせる」「歩かせる」「コミュニケートする」ことが重要になります。ただ、先ほども触れたように急性期病院は病気の治療がメインですから、その患者さんが一日をどのように過ごせばベストなのか、24時間の中でどれくらい起きて、座って、立って、歩いて……といったリハビリを実践すればいいのかについて考えたり、取り組む余裕がないのが現状です。そのため、長期間安静のままにして廃用症候群となり、そのまま寝たきりになる患者さんが出てしまうのです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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