正解のリハビリ、最善の介護

「全身管理」を行えるリハビリ医が欠かせないのはなぜか?

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 適切なリハビリにより、病気やケガによって失った機能と能力をできる限り取り戻すためには、良質な回復期リハビリ病院を選ぶことが大切です。そのポイントのひとつが、「全身管理」を行えるリハビリ主治医がいるかどうかです。

 回復期リハビリ病院には、さまざまな病気やケガの患者さんがやってきます。脳卒中、脳外傷、脳の変性疾患、心臓疾患、呼吸器不全、肺や消化器などのがん、肺炎などの炎症性疾患、脊髄損傷、変形性関節症、下肢切断、骨折……など多岐にわたります。そのため、リハビリの専門医であっても、他のあらゆる病気をきちんと理解している医師でなければ務まりません。それぞれの患者さんに対し、なぜそうした症状が起こっているかの病態を把握し、入院理由となった原疾患だけでなく全身のどこかにほかの症状が現れた場合でも、的確な判断と対処ができなければ、適切なリハビリは行えないのです。

 以前、「重症心不全」で全身状態が悪化していた60代の男性患者さんが心原性脳塞栓症を併発して当院に入院になりました。心不全というのは、心臓の働き=ポンプ機能が徐々に低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなった病態です。慢性心不全になると、良くなったり悪くなったりを繰り返しながらだんだんと心機能が低下していき、命を縮めます。過度な運動は心臓に負担がかかって病状を悪化させるリスクがあるため、安静にさせるべきという意見があります。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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