正解のリハビリ、最善の介護

「廃用症候群」は適切なリハビリでどこまで回復するのか?

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 手術はきちんと成功して病気は回復している。脳の画像にも大きな問題は見当たらない……。本来であれば元気になるはずなのに、それでも寝たきりの状態が続いている患者さんが当院にやってくるケースは少なくありません。ほとんどの場合、原因は「廃用症候群」です。

 46歳の難治性脳腫瘍術後の患者さんのケースもそうでした。主治医である日本を代表する脳外科医の先生も回復しない原因がわからない。なんとか回復させてくれないかと依頼が入りました。後日、このケースはお話ししますが、日本を代表する術者からの人間回復の紹介は名誉なことです。

 廃用症候群とは、病気やケガの治療のために長期間安静にしていたことで、心身機能が大幅に低下する病態です。筋肉や骨の萎縮、筋力や心肺機能の低下、呼吸や嚥下障害、起立性低血圧や深部静脈血栓症などの循環器障害、床ずれなどの褥瘡(皮膚障害)、抑うつなどの精神障害や認知機能低下が現れるケースもあり、寝たきりになる大きな原因になります。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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