正解のリハビリ、最善の介護

「廃用症候群」は適切なリハビリでどこまで回復するのか?

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 治療そのものはうまくいき、脳にも大きな損傷は見られないのに、廃用症候群によって元気を取り戻せず、「人間力」を回復できない--。かつて脳外科医だった私はそんなケースを何度も目にして、歯がゆい思いをしました。しかし、廃用症候群で動けなくなっている患者さんは、適切なリハビリによって機能と能力を取り戻せる可能性があります。80歳を超えると廃用症候群による全身の衰えの回復度合いは悪くなりますが、70歳代まではかなり取り戻すことができるのです。80歳以上の患者さんは急いで起こして動かさないといけませんし、手術前のリハビリが必要になります。2週間以内にリハビリ病院への転院ができるスピード感が予後を左右します。

 廃用症候群で当院に入院される患者さんには、初日から座らせる、立たせる、歩かせる、コミュニケートするリハビリを行います。もちろん状態を確認しながらの実施で、だいたい1週間、長くても2週間ほどで座る、立つが問題なくできるようになります。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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