上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

高齢者の再手術では術後の「リハビリ」と「食事」が重要

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 結局、手術を進める中で弁を両方とも取り換えないと技術的にやりにくいことがわかり、2つとも新しい生体弁に交換して無事に完了。術前に心不全が高度だったので、手術直後は補助循環装置を1日使用しましたが、その後は通常通り順調に回復され、いまはそれまで従事していた訪問診療を再開しています。

 最初は再手術を不安がっていたのですが、術後は「すごく調子がいい」と喜んでいました。85歳を越えても再手術で元気を取り戻すことができるのです。

 こうした高齢者の再手術で重要になるのが術後の「リハビリ」です。再手術を受けた高齢の患者さんは、若い頃に初回手術を受けた際の経験から、その頃の感覚で「術後はすぐに回復する」と考えている人が少なくありません。しかし、加齢とともに体力は落ちていますし、手術の規模も初回より大がかりで負担が大きくなるケースが多いので、自分で考えている以上に回復の度合いは遅くなります。ですから、術後のリハビリにしっかり取り組めるかどうかがその後の回復に大きく関わってくるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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