上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

高齢者の再手術では術後の「リハビリ」と「食事」が重要

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 患者さんの希望に応じて、退院後もしっかりリハビリに取り組めるように回復期病院を紹介することも行います。高齢の患者さんに、日本人の平均余命の“元気に生きる側”に入ってもらうためにはリハビリがものすごく重要なのです。

 高齢者の再手術では術後の「食事」も大切です。高齢になると食事量が減って低栄養の状態になっている患者さんもいらっしゃいます。高齢者はただでさえ全身の筋力や体力が低下しているため、栄養が不足すると術後の合併症リスクをアップさせたり、予後を悪化させることがわかっています。術後はしっかり食事をしてもらわないと十分な回復が望めなくなってしまうのです。

 そのため、術後の食事は「本人が好きなものを許容できる範囲で好きなだけ食べてもらう」という方針をとっています。患者さんの食べたいものをご家族らに持ち込んでもらう場合もありますが、基本的には病院側が「病院食」=「治療食」という形で対応します。病院食のメニューは決まったパターンにはせず、本人の好みに合わせた献立に変更できるようにしています。心臓手術後の高齢者はカロリーを多めにとってもらう時期でもありますから、とにかくまずはなんでも食べてもらうことが大事なのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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