上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

高齢者の再手術では術後の「リハビリ」と「食事」が重要

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 かつては、術後は1週間近く集中治療室で安静にするのが当たり前と考えられていました。しかし近年は、患者さんがベッドから起き上がって歩行などを行う「離床」をできるだけ早く始めるようになっています。医師や看護師、理学療法士らのリハビリスタッフの指導のもと、一般的には手術の翌日から離床を始め、2~3日で病院内を歩き回り、平均で2週間ほどリハビリを行うのです。

■機能がプラス50%回復するケースも

 高齢者の場合、ただでさえ体力や筋力が衰えているため、術後に長期間寝たきり状態になると「廃用症候群」を起こしやすくなります。長く安静状態を継続することで心身機能が大幅に低下する病態で、日常生活に戻るまでに時間がかかってしまったり、そのまま寝たきりになる原因にもなります。

 廃用症候群を防ぐとともに早期回復のためにはリハビリは欠かせません。医師をはじめとするリハビリのスタッフと患者さんがしっかり情報を共有し、何かトラブルがあれば早い段階で見つけて対応しながら体力と運動機能の回復に努めます。すると、再手術で心臓が軽快した分、手術前よりも運動機能がプラス50%くらい回復するケースも珍しくありません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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