上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「腰痛」の背後に命に関わる心臓病が隠れているケースがある

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 大動脈解離の初期症状は激痛が走るケースが多く、患者さんはよく「体を引き裂かれたような痛み」と訴えます。最初に解離した血管の位置によって痛みが発生する場所は変わり、心臓に近い血管が裂けた場合は胸、胸部の大動脈なら背中、腹部の大動脈なら腰に激痛が現れます。ただ、血管の解離は裂けた位置から血流に沿って進行していくので、最初に心臓の近くの血管が裂けたとしても、胸↓背中↓腹部↓腰と痛みが移動し、解離の進行とともに腰痛が生じます。

 また、発症後に痛みに反応した高血圧が続くと、背中側で裂けた大動脈内の口から血流と反対の心臓側へ裂け目が拡大する逆行性解離を生じるケースもあります。この状態から心臓周囲に血液が染み出して、心タンポナーデによる突然死を招くこともあります。一見、心臓と関係ないように思われる腰痛が、致死的な心臓病のサインになるケースがあるのです。

2 / 6 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事