Dr.中川 がんサバイバーの知恵

森永卓郎さんが報告した「原発不明がん」…組織検査が手掛かりになる可能性

経済アナリストの森永卓郎さん(C)日刊ゲンダイ

 それでも、画像診断技術の向上で原発不明がんは減少傾向で、全体の2%ほどです。原発巣が不明のままのこともありますが、治療の過程で分かることもあります。

 原発巣が不明でも、組織を採取して調べることは重要です。それによって「がん」であることは確定でき、組織型が手がかりとなって原発巣を推定でき、推定される原発巣に準じた治療が行われる可能性もあります。

 森永さんは今回、多数の遺伝子を同時に調べる「がん遺伝子パネル検査」を受けたところ、膵臓がんであれば現れるはずの遺伝子KRASの異常が見られず、膵臓がんとは関係の薄い遺伝子異常が3つ見つかったため、原発不明がんと告げられたようです。

 特定の遺伝子が変異すると、臓器の枠を超えてさまざまながんの発症原因となることが分かっています。そんな変異を特定するのが遺伝子検査です。変異を特定した上、かつその変異に対応する薬剤があれば、その薬を使うことで、完治に近い状態まで回復するケースもあります。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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