■注射よりも簡便
このような緊急事態を避けるために、低血糖症状が重篤な場合、グルカゴン注射を使用する方法がある。グルカゴンは最も強力な血糖上昇作用を持つホルモンで、肝臓のグルカゴン受容体と結合して活性化し、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンをグルコースに分解して血液中に放出する。ただし、この治療法を実施するには、家族があらかじめ医療機関でグルカゴン注射の訓練を受け、グルカゴン注射セットを常備しておく必要がある。
「従来のグルカゴン注射は、冷蔵庫から取り出して注射器をセットし、溶解液を吸い取るなどの手間がかかりました。しかし、20年には新たな低血糖時救急処置剤『バクスミー』が登場しました。この点鼻粉末剤は1回使い切りで、グルカゴン3ミリグラムを含んでいます。点鼻容器の先端を患者の鼻腔に挿入し、ピストンを押すことでグルカゴンが鼻腔に放出され、鼻腔粘膜から吸収されます」