上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

はやりの「16時間断食」は心臓にとってマイナスなのか

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 たしかに、16時間断食を積極的に行っていた人は、もともとBMI(体格指数)が高い肥満気味の人が多かった可能性があります。肥満は心血管疾患の代表的なリスク因子なので、死亡リスクがアップするのは当然といえます。

■肥満の解消はプラスになるが…

 とはいえ、断食を含むダイエットはトータル的に見れば心臓にとってマイナスになりうると、個人的には考えています。もちろん、肥満は高コレステロール、高血糖、高血圧のリスクを高め、動脈硬化を促進して心血管疾患を発症しやすくするのは間違いありません。ですから、肥満を解消するためのダイエットは心臓にとってはプラスといえます。しかし、そのために食べない=断食や極端な食事制限を行うことは、心臓にとっては逆効果になってしまう危険があるのです。

 一般的に「食欲」「性欲」「睡眠欲」が人間の3大欲求といわれています。そのうち、性欲と睡眠は加齢によって欲する度合いが変化して、減少していくといえるでしょう。年をとると、疲れていたりお酒を飲んで酔ったりすると、性欲が減退するケースが増えてきます。また、高齢になるとやたらと朝早く目覚めたり、若い頃のように長時間の睡眠がとれなくなったりします。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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