医療数字のカラクリ

インスリンはがんを増やす!?

 それでは、スルフォニル尿素やインスリンを使ったグループでがんが多いのはなぜでしょう。これはやはりインスリンそのものにがんを増やす作用があるのかもしれません。というのもスルフォニル尿素も膵臓を刺激してインスリンを多く出す薬ですから、インスリンを多く使うのと同じような効果があります。これに対して、メトホルミンはインスリンの効きをよくする薬で、少ないインスリンを効率よく使うためにインスリンが高くならず、他の治療に比べてがんが少ないのかもしれないのです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。