細胞の染色体に載っている遺伝子を働かなくする(破壊する)ことを、バイオの世界では「ノックアウト」と呼びます。1970年代から実用化されており、研究に多用されてきました。しかし、かなりの手間と時間とお金がかかるため、産業化は遅れていました。
ところが、この問題を一気に解決するまったく新しい技術が出てきたのです。「ゲノム編集」と呼ばれるもので、中でも2013年に出現した「CRISPR/Cas9」(クリスパー・キャスナイン)は「革命」といわれるほど注目されています。
これは、ガイドRNAと、Cas9と呼ばれるDNA切断酵素を組み合わせた方法です。ガイドRNAとは、DNAの狙った場所に結合するように設計された特殊な分子です。Cas9はガイドRNAが結合した位置でDNAを切断します。切られたDNAは細胞に備わっている修復機能によって再びつなぎ合わされるのですが、その際に一定の確率でミスが生じ、その部分の遺伝情報が壊れてしまいます。つまり、その遺伝子を「ノックアウト」できるのです。
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