細胞内の核酸の一種である「メッセンジャーRNA(mRNA)」に結合することによって特定の遺伝子の働きを阻害するのが、「核酸医薬」と呼ばれる新しいタイプの薬です。
細胞には細胞核があり、その中に染色体が収納されています。染色体にはDNAが入っていて、人間の設計図である遺伝子(遺伝情報)が書き込まれています。ただし、遺伝子はそのまま機能するわけではありません。いったんmRNAに情報が写し取られ、これをもとにして細胞内の別の場所でタンパク質などが合成されるのです。ところが遺伝情報が間違っていると、異常なタンパク質が作られるようになるため、病気の原因になることがあります。
核酸医薬は狙ったRNAと結合して、異常なタンパク質が作られないようにします。DNA上の遺伝子そのものには作用しないため、根本的な治療にはなりません。
しかし、比較的安く簡単に作れるメリットがあります。しかも、注射などで患者に投与できます。前々回、前回でお話ししたゲノム編集技術を使えば狙った遺伝子の除去も可能ですが、いまのところ培養細胞レベルでしか成功していません。
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