明細書が語る日本の医療

膵臓がん手術を受ける患者は5割に満たない

表は膵臓がん手術件数(C)日刊ゲンダイ

 特徴のひとつは、新規患者数に比べて手術件数が少ないことです。男性患者の48%、女性患者の35%しか手術を受けていない計算になります。膵臓がんは発見が難しいため、見つかったときには手術ができない状態(周辺臓器に浸潤・転移している状態)であることが多いのです。しかし、手術以外に根治が期待できる治療法はありません。手術が受けられなければ、膵臓がんで早晩亡くなることを意味します。

■見つかったときには手遅れが多い

 とはいえ、手術を受ければ安心というわけでもありません。12年の新規患者数(男女計)は約3万4800人、15年の死亡数は約3万1900人です。これらの数字から、どのような治療を受けようと、数年以内に患者の9割以上が亡くなっていることが推測されるのです。

 もうひとつの特徴は、男性の方が女性より手術件数が多いことです。新規患者数はあまり違っていないのに、手術件数では1.5倍近い開きがあります。これには発症年齢の違いが影響しています。男性は70代以下の患者が多いため、条件さえ満たせば手術を行う傾向が強いのです。一方、女性は80代以上の患者が多いので、体力を奪う手術は避ける傾向が強いわけです。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。