Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

南果歩さんが切り替え 乳がん代替療法は死亡リスク5.7倍

南果歩は乳がんの薬物治療を副作用で中断(C)日刊ゲンダイ

■高学歴や60歳以下の女性は要注意

 今回の南さんだけでなく、同じ乳がんで亡くなった小林麻央さん(享年34)も代替療法に頼ったことが報道されました。米アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏も、代替療法を優先するあまり、手術が9カ月遅れてすい臓がんで亡くなっています。

 05年に発表された国内の調査では、がん患者は44.6%が何らかの代替療法を利用。ほぼ2人に1人です。その中身は、サプリを含む健康食品が96.2%と圧倒的で、鍼灸は3%程度と少数派でした。

 欧米は、「通常治療の補完」や「通常治療の症状の緩和」を目的に鍼灸やマッサージ、心理療法が行われますが、日本は「がんの進行抑制」が67.1%、「治療」が44.5%と、南さんのような通常治療から代替療法への切り替えがうかがえます。

 毎月の支払額は平均5万7000円ですが、50万円かけた人も。今年8月には、科学的な根拠がない臍帯血を無届けで投与した医師が逮捕され、その患者は1回300万~400万円を支払っていたといいます。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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