気鋭の医師 注目の医療

遺伝子変異からがんのタイプを見分け創薬や治療に役立てる

土原一哉ゲノムTR分野長(提供写真)

 遺伝子の解析は、「NGS(次世代シーケンサー)」という最新の高性能機器で行われる。たとえば、肺がんでは「EGFR」「ALK」「ROS1」「RET」などの遺伝子に変異があり、現在、全体の4分の3くらいは分子標的薬のターゲットが見つかっているという。

「EGFR陽性の肺がんでステージⅣだと、従来の抗がん剤では余命1年とされていました。それが第1世代のEGFR阻害薬の『イレッサ』『タルセバ』が開発され、余命が2~3年に延び、それが効かなくなっても第3世代の『タグリッソ』を使うと、さらに余命が1~2年延びます。このように完全に治らなくても新薬が開発されるごとに余命が1~2年延びます。それに分子標的薬は副作用が少なく、飲み薬なのでQOLを保ちながら生活ができるのです」

■もともとは消化器外科医でスタート

 薬が効かなくなるのは、がん細胞が耐性をつくるために、さらに遺伝子を変異させるからだ。しかし、遺伝子変異のタイプを層別化することで、耐性がどのようなメカニズムでつくられるのかも調べられるようになるという。また、ゲノム医学を用いた検査、診断法も大きく進歩してきている。

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