公費による中学生のピロリ菌検診・除菌になぜ慎重論が?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 それでも「小児のうちに除菌をした方が胃がん発症リスクが低くなる」といったエビデンスがあれば、話は変わってくるかもしれない。

 ところが、「ピロリ菌除菌が胃がん予防になる」というエビデンスはあるが、「小児のうちに」というエビデンスはない。さらに、ピロリ菌除菌をしても胃がん発症リスクがゼロになるわけではない。

 小児でも、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、鉄欠乏性貧血などには、ピロリ菌除菌治療を行う。この場合内視鏡検査後、胃から採取した菌を培養し、複数ある除菌薬のうちどれが効くか感受性を調べる。慎重に慎重を重ねてピロリ菌除菌をするのは、これらの病気の治療に不可欠だからだ。症状が全くない中学生に安全性が認められていない薬を使うのとはワケが違う。

「感受性を調べて投与すれば、除菌成功率は90%を超えます。ところが一般的な除菌では、感受性の検査は行いません。中学生では内視鏡検査もしない。ピロリ菌除菌の成功率は成人で70~80%、2回目で90%強といわれていますが、小児では2回目で80%弱です」

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