天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

ノロウイルスは心臓にも大きな負担をかける

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 当院でも、心臓の手術を控えて入院していた患者さんがノロウイルスに感染し、1週間ほど手術を延期したケースがあります。

 当然のことですが、そのまま手術すると合併症を起こすリスクが高いからです。その患者さんに対しては、感染を拡大させない対処をして、脱水にならないように細心の注意を払い、ウイルスが完全に排出されるまで待ちました。

 また、私自身もノロウイルスに感染して予定していた手術を取りやめた経験があります。これまで35年以上、心臓外科医をやってきて、手術を回避したのはノロウイルスに感染した時と、尿管結石になった時の2回だけです。

 ノロウイルスによる下痢と嘔吐は想像以上にひどいもので、完全に寝込みました。判断力にも問題が出るような状態で、あれでは患者さんに対してベストな医療を提供できるはずもありませんでした。それくらい、きつい症状に見舞われました。

3 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事