天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

患者の長い人生に付き合っていく 医者としてのひとつの道

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 心房中隔欠損と同様に無症状ならば治療を待てる場合も多いのですが、心不全を起こしたとなると手術が必要です。

■心臓はしっかり治せば長生きできる

 ゴアテックス製のパッチを当てて穴を塞ぎ、肺静脈が左心房に還流するように修復しました。先天性の心臓疾患なので、一般的には小児の頃に小児外科専門の医師が行う手術になりますが、手術自体の難易度は、やや応用編寄りの入門編といったところで、それほど難しいものではありません。ただ、荒っぽく処置してしまうと術後に不整脈の後遺症が表れることがあるため、やはり確実で丁寧な処置が必要です。もちろん、手術は無事に終わり、彼女の心臓は完全に元の病気がない状態に戻りました。

 手術の後、しばらくしてから再び子供を授かり、彼女は2人の子供を育てる母親になりました。もう40歳を越える年齢になりましたが、心臓の状態は問題なく順調に推移しています。今は1年に1回、診察で顔を合わせます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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