天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

感染症対策には細菌やウイルスの「スクリーニング」が重要

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 しかし、ペニシリンが普及してからは劇的に減少し、いまはほとんど心配ない状況です。ここ数年、再び感染者が増加傾向にありますが、抗生物質の進歩によってコントロールできるようになっているため、かつてほどはスクリーニングが重視されていないのが現状です。

 次に要注意とされていたのがウイルス性肝炎です。B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどへの感染により肝細胞が破壊される病気です。B型もC型も主に血液を介して感染しますが、こちらもいまは薬でコントロールできるようになりました。また、ウイルスの型には関係なく、内視鏡のように再利用する医療器具に対する効果的な消毒法がすでに確立されています。そのため、スクリーニングすることに以前ほど意味がなくなってきているといえるでしょう。

 一時期はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)も注視されていました。感染すると免疫細胞が破壊され、最終的にAIDS(後天性免疫不全症候群)を引き起こすウイルスです。主に性接触や血液を介して感染し、いまもHIVを保有している患者はいます。しかし、効果的な薬の開発によって免疫不全によるカリニ肺炎の発症をコントロールできるようになり、適正な薬の服用で一生発病しないことも可能になりました。

3 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事