その一方で厄介な人も。父のいるユニットは全10人で、その中の1人は認知症で徘徊(はいかい)が激しい。ずっと歩き回るだけでなく、人の部屋に侵入して物を持ち出したり、失禁や脱ぷんをしてしまう。汚れた手で触りながら歩き回るため、入居者から大ひんしゅくを買っている。その蛮行にストレスをためる人も多く時折、職員や彼の家族に不満をぶつけている場面にも遭遇した。その人は父の部屋にも頻繁に来訪。ハサミや電気シェーバーが紛失したことも。返ってきたから問題ない。が、「夜中に誰かが入ってきて眠れないんだ」と、父もぼやいていた。
入居者同士のトラブルは想定外だった。背景が異なる人の共同生活だから、いさかいも当然起こる。心の中では映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」と思うようにした。毒舌のアライグマもいれば、怒ると怖い木もいる。烏合(うごう)の衆といったら失礼だが、十人十色。病気も老化も個性と受けとめるしかない。
実録 父親がボケた