がんと向き合い生きていく

一緒に悩み頑張ってください それが医師の私の生き甲斐です

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ベッドで開いた雑誌には、医者がこんなことを書いていました。

「日本人は、命に限りがあることをもっと自覚すべきだ。死を考えたことがないから諦めが悪い。死の受容ができないでいる。死の教育が必要だ」

■人は生きたいのが当たり前

 ああ、そうですか? 医者はそんな考えなんですか。立派ですね、あなたは。きっとあなたが死ぬ時は、死を受け入れて穏やかに死ぬんでしょうね。

 ああ、元気なときに私は言いましたよ。死なんて怖くないと言いましたよ。だけどいま、こうしてあの世に行く列車がまだまだ来ないようにと、ホームで震えて待っているのです。

 やっぱり生きたいのです。5歳の娘と妻と別れたくないのです。だから、こうして我慢して入院して、また、白い天井を見つめているのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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