ベッドで開いた雑誌には、医者がこんなことを書いていました。
「日本人は、命に限りがあることをもっと自覚すべきだ。死を考えたことがないから諦めが悪い。死の受容ができないでいる。死の教育が必要だ」
■人は生きたいのが当たり前
ああ、そうですか? 医者はそんな考えなんですか。立派ですね、あなたは。きっとあなたが死ぬ時は、死を受け入れて穏やかに死ぬんでしょうね。
ああ、元気なときに私は言いましたよ。死なんて怖くないと言いましたよ。だけどいま、こうしてあの世に行く列車がまだまだ来ないようにと、ホームで震えて待っているのです。
やっぱり生きたいのです。5歳の娘と妻と別れたくないのです。だから、こうして我慢して入院して、また、白い天井を見つめているのです。
がんと向き合い生きていく